フルハーネス特別教育を急ぎご受講ください!!

フルハーネス関連法令が2022年1月2日から完全施行!!

こんにちは。長崎クレーン学校の川崎です。
今回はフルハーネス特別教育について紹介していこうと思います。

そもそも特別教育とはどのようなものか?
労働安全衛生法第59条の3において
「事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛星のための特別の教育を行わなければならない。」
と定められています。
事故の危険がある業務を何も知らない人が行えば、事故が増えてしまいますからね(;^_^)

その教育のうちの一つが“フルハーネス型墜落制止用器具特別教育”(以降、フルハーネス特別教育)となります!!

今回はフルハーネス特別教育の概要と注意しないといけない内容についてまとめてみたいと思います。

1、フルハーネス特別教育の概要
2、フルハーネス特別教育の対象業務
3、フルハーネスの使用について(胴ベルトの使用について)
4、U字吊りの安全帯について
5、まとめ

1、フルハーネス特別教育の概要

高い所で作業する時には墜落、転落災害がつきものです。
実は墜落、転落災害は年間の死亡災害の中でも一番数の多い危険な労働災害です。
令和2年中は802名の方が亡くなっておりそのうち191名が墜落転落災害です。
2番目に多いのが労働中の交通事故で164名の方が亡くなっています
4日以上休むような怪我をした方まで含むと墜落、転落が20,997名、労働中の交通事故が6,863名
約3倍(・_・;)
ちなみに労働中以外も含めた交通事故での重傷者は27,774名となっています。
実際に計算までしたわけではありませんが、普段道路を利用している人数からすれば現場に出て仕事をしている人数の方が当然少ないですから、墜落転落災害にあう確率は交通事故以上となるといえます。
高い所での作業はそれだけ危険と隣り合わせです!!

そこで、より安全に作業ができるように見直されたのが墜落制止用器具(以降は以前から建設現場で使われている安全帯と記載します)です。

2015年のデータになりますが、墜落転落で死亡した方の原因を見てみると、248名亡くなったうちの236名が安全帯の不使用によるものです。(安全帯使用は6名、原因不明が6名)
正しく安全帯を使用して作業を行えば死亡事故は0にはならずとも少なくとも20~30人程度まで減少する可能性があります。
安全帯はそれだけ身を守る為に必要な機材です!!

このようなことから、今回法令の改正が行われることとなりました。

フルハーネス関連の法令は2019年2月1日に施工されており、移行期間として2022年1月1日までは従来通りの作業が可能となっていました。

しかし、2022年1月2日からは完全施行となっており、新しい法律に合わせた作業が必要となります。

準備が済んでいない方は急いで準備を終わらせてください!!

今回の法令改正で変更となったところは様々ですが、必ず覚えておかなければならない大きなポイントは3点です。
①特別教育の受講、②フルハーネスを使用しなければいけない高さ、③U字吊りの安全帯の使用の3点となります。

2、フルハーネス特別教育の対象業務

まず特別教育の対象業務は、「高さが2m以上の個所であって作業床を設けることが困難なところにおいて、墜落制止用器具のうちフルハーネス型のものを用いて行う作業に係る業務」となります。

分かりやすくポイントを分解すると以下の3点すべてに該当する業務が対象業務となります。
1:2m以上の高さ 
2:作業床が無い 
3:フルハーネスを使用する

図にするとこのような感じです

なので3つの条件のうちどれか1つでも条件を満たしていなければ対象外となります。
例えば1と2の条件を満たしていても使用する安全帯が胴ベルトなら特別教育は必要ないですし、1と3を満たしていても作業床のある場所なら特別教育は必要ありません。

ただし、問題となってくるのが作業床です!!
1と3は2m以上の高さか、そうじゃないか、フルハーネスを使用するかしないか、なので基準が明確です。
しかし作業床だけは別です。
実はこの作業床に法令上の明確な定義がありません(・_・;)
組みあがった足場の上での作業や機械に備え付けている点検台の上での作業、高所作業車のバケット内での作業などは対象外となる旨の発表等はありますが、それ以外の部分はどこまでが作業床とみなされるかは判断が難しい所です。
また、1日の作業のほとんどが特別教育の対象外の作業であったとしても作業過程のほんの一部でも対象作業があれば受講しておく必要があります。

現状、作業床に関する判断が難しいところもありますので特別教育の受講をすべきです。
それに、特別教育の対象、対象外に関わらず自分の身を守るための大事な機材に関する教育です。
どんなに事故防止対策をしたとしてもちょっとしたことから事故は発生します。
法律で決まっているから受けるのではなく自分の身を守るために正しい知識を身につけて作業に当たってください。

3、フルハーネスの使用について(胴ベルトの使用について)

今後使用していく安全帯は原則としてフルハーネスを使用していきます。
ただしフルハーネスは従来の胴ベルト型からするとランヤードを取り付ける位置の違いなどから落下距離が長くなります。
そのため地上から6.75m以下での作業においては胴ベルト型の使用も許可されています。

ここで皆さんに注意していただきたいのは、胴ベルトは「使用が許可されている」だけであり「使用を推奨している」わけじゃありません!!

胴ベルト型安全帯は落下時の衝撃が腹部に集中し内蔵損傷や背骨の骨折などが発生する可能性があります。
墜落が止められたとしても胴ベルトが原因で怪我をしていたのでは意味がありません(;^_^A

下記の図は落下距離の計算方法になります。

こちらの図の方法でフルハーネスを使用し腰より高い位置にフックを掛けた状態での最大落下距離を計算した場合

A=170㎝(ランヤード)+(145㎝(Ⅾ環の高さ)- 85㎝(フックの取付位置))= 230㎝
B=230㎝ + 120cm(第1種ショックアブソーバー)+ 100㎝(ハーネスや親綱等の伸び)=450㎝

腰より高い位置にフックを掛けた場合で最大落下距離は4.5mとなります。
また、腰より低い位置にフックを掛けた場合を同様に計算していくと最大落下距離が6.75mとなります。

この数字だけ見た場合かなり落下距離が長い印象がありますが、あくまでもこの数字は最大落下した場合です。

フルハーネスを使用しても落下距離を短くすることが可能です。

例えばフックの取付位置です。
今までと同じ位置にフックを掛けた場合、Ⅾ環の位置の違いから60㎝程度、つられた時のⅮ環の位置のずれが10㎝程度の差が出てくるので、合計で70~80㎝程度落下距離が長くなります。
つまりフックを掛ける高さを70~80㎝程度上げれば胴ベルトと同じ程度の落下距離となります。

次に使用するランヤードの長さです。
ランヤードは構造規格で最大が1.7mとなっておりますが、基本的に1.1m~1.7m程度の範囲で製造販売している為、短い長さのランヤードを使用すれば落下距離はそれだけ短くなります。
またロック機能の付いた巻取り式ランヤード(シートベルトのように早く引き出すとロックがかかる)を使用することでランヤードの長さが1m未満となる場合もあります。
「フックの取付位置を高く」し「ランヤードの長さを短くする」この二つを組み合わせれば落下距離はかなり短くなります!!

フルハーネスは、今までの胴ベルトと同じ作業方法の場合には落下距離が伸びますが、作業方法を見直すことで落下距離を短くすることが可能です。
胴ベルトはあくまでも、落下距離を短くする対策を取ったとしても地面に激突する可能性がある場合や、フックの取付高さを変更するなどの対策を取れないなどの場合で胴ベルトを使用すれば墜落を防ぐことが出来る場合に使用できる程度のものだと思ってください。

ここで勘違いの多い胴ベルトの大事なポイントですが、

たまに「新規格=フルハーネス」と思われている方がいらっしゃるのですが、新規格には胴ベルトも含まれています。
旧規格に適合した古い胴ベルトの使用はできません。
胴ベルトを使用したい方は新規格の胴ベルトも準備しなければなりません。

さらに、胴ベルト型は墜落制止用器具の規格(新規格)により墜落時の衝撃荷重を4kN以下に抑えなければならない為、腰より低い位置にかけて使用する第2種ショックアブソーバー(衝撃荷重が6kN以下)が使用できません!!
そのため胴ベルト型においては原則として腰より高い位置にフックを掛けて使用するしかありません。
胴ベルト型の使用できる作業範囲はかなり限定されています。

それだけ過去に胴ベルトによる事故が発生しているということです。

フルハーネスは落下距離が長くなるとか、動きにくそうなどマイナスなイメージを持っている方も多いと思いますが、安全性も高く使い方を考えれば今までと変わらない作業が可能となります。
またフルハーネスは肩に担ぐような形になるため胴ベルトを着けているときよりも疲れにくいという方も多くいらっしゃいます。
慣れるまでは大変かもしれませんが今後はフルハーネスを使用していってください。

4、U字吊りの安全帯について

電柱などでの工事の際に使用されるU字つりの安全帯ですが今回の法令改正により、U字つり安全帯での単独作業が禁止となりました。
U字吊りの安全帯は作業姿勢を保持するもの、ワークポジショニングシステムという分類(胴ベルト、フルハーネスはフォールアレストシステム)であり基本的に墜落を制止する機能が無い保護具として分類されます。
U字つり安全帯を使用する際は墜落を防止するため、別途フルハーネスでの1本つりか胴ベルトでの1本つりが必要となります。

電柱での作業となると胴ベルトの使用可能な高さ6.75mを超えることがほとんどなので、ハーネスの併用が多くなります。

併用をする際に覚えておいていただきたいのは、今回の新規格はフォールアレストシステム(胴ベルトとハーネスの1本つり)に対する規格となっているということです!!
U字吊りの安全帯は新規格の対象外となるため、ワークポジショニングシステムとして使用する分にはそのまま使用して問題ありません。
ただし、「U字吊りと胴ベルト1本つり兼用」となっているタイプの旧規格品については胴ベルト1本つりとして併用することはできませんので注意してください。

5、まとめ

今までの作業との変更点も多く、初めのうちは作業のしづらさを感じるかもしれませんが皆さんの安全を守るために大事なことです。
実際、法令が改正され特別教育が始まってから年間の墜落による死亡災害は減少傾向にあります。
フルーハーネス特別教育は長崎クレーン学校でも行っていますので、正しい知識を身に着け、墜落制止用器具を適切に使用し労働災害を防止していきましょう。

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